2023/03/14

「縁の下のさらに下」

 ■「縁の下の力持ち」という諺をご存じですか?

広辞苑では、「人に知られないが、陰で努力・苦労すること。また、その人。」とあります。この諺の表す「縁」とは、元々は「椽」という字で、訓読みでは「たるき」と読み、「家の要となる部分を支える頑丈な柱」の事です。

けれども、要を支える椽だけでは家を建てることは出来ません。要以外の場所を支える柱や、それらを更に支える家の土台等も必要です。

つまり、縁の下の力持ちとは、家を支えている椽を見えないところで助けるもの。それを人に例えて使われている言葉なのです。

しかし、その椽の下で支えるものを更に支えているものがあります。それが私たち地盤調査部が調査している「地盤」と言えるでしょう。

今回は「縁の下の力持ち」を更に下から支える「地盤」とそれを調べる「地盤調査」について皆さんに紹介したいと思います。

(地盤調査に欠かせないボーリングマシン。大きな三角錐が目印!!)


地盤調査ってどんなことをしているの?

地盤を調査する方法は様々ありますが、地盤の強さや地盤状況を把握する主な方法にボーリング調査SWS試験 (:スウェーデン式サウンディング試験)等があります。

ボーリング調査は最も基本的な地盤調査方法で、300kg程ある機械で地面を掘りながら、土の中で試験を行ったり、土の採取を行います。この調査方法では、地盤の支持力を算出する際に必要なN値、砂質土や粘土といった実際の土、支持層までの深度、地下水位等一度の調査で多数の情報が得られます。その為、大規模建築物の設計、防災、土壌汚染調査等の調査の際に用います。

しかしながら、ボーリング調査は通常3m×4m程度の作業面積が必要で、作業に1日~数日を要する等大がかりな調査である為、費用も高くなり住宅等の調査には不向きです。

そこで、SWS試験が使われます。100kg程の機械で行う簡易的な試験である為、費用が安くかつ半日程度で調査でき、ボーリング調査で得られるN値に相応する「換算N値」を算出することができます。ただし、SWS試験は簡易的であるが故に、土の採取が出来ない、ある程度硬い地盤には貫入不能、深度が深くなると精度が低くなる等のデメリットがあります。

地盤調査は目的や環境によって、より適した方法で行います。

(SWS試験で用いるマシン。ボーリングマシンの導入が難しい所でも活躍!!)


地盤調査ってどのように社会へ貢献しているの?

その答えは多岐にわたります。

冒頭で述べたように、地盤とは「縁の下のさらに下」にあるものであり、全ての基礎であるからです。例えば、地盤を調査しなければ、施設、住宅、橋、道路・・・どんな構造物も安全に作れません。地下水がどこにあるのか。この斜面は安全なのか。果ては地球がどのように出来たのか等々。

地盤調査は都市開発、環境資源、防災、地政学、様々な分野で使われており、人間活動及び自然環境を支える基礎の技術として社会へ貢献しています。


(地盤調査を怠ると災害に繋がる事も・・・)

地盤調査をしなければ何が起こるの?

様々な災害に繋がる恐れがあります。

例えば1964年の新潟地震による液状化はまだ地盤調査が一般的ではなかったころの失敗例として有名です。また、2021年の大雨と不適切な盛土による熱海市伊豆山土石流災害なども地盤に関する災害としてみなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

このような大災害の他にも、建物が傾く不同沈下(ピサの斜塔が有名)地震時の影響(地盤が弱い地域は揺れが大きくなる)等様々な災害にも繋がります。

そういった災害を防ぐ為に、地盤を調査しそれぞれの土地の特性を把握して、地盤状況にあった対策を行っておく事が大切なのです。


「地盤」は基礎の基礎!

「地盤」は目に見えないものであり、普通に生活するうえであまり気にすることのないものではありますが、この記事を読んでいただいて普段の生活の中で自分の住む場所、目に映る景色、自然、それによる災害、様々なものに関わっている基礎の基礎が「地盤」であるという事を、少しでも感じていただければ幸いです。





0 件のコメント:

コメントを投稿