車に乗っているときや歩道を歩いているときに、地面の下がどのようになっているかを考えたことはありますか?大きなビルやおしゃれな建物は人の注目を集めやすいですが、私達の業務はあまり人の目にふれることはありません。しかし、地面の下には、それら建造物を支えるための、私達技術者の苦悩があります。「蛇口をひねれば水がでる」、そんな当たり前を今一度、振り返ってみると、面白い世界があります。
水道技術の普及や発展を紹介するうえで、避けて通れないのが古代ローマです。古代ローマは、とても建設技術の高い時代としても知られ、映画「テルマエ・ロマエ」の題材としても取り扱われています。以前紹介させていただいた、フランスのポン・デュ・ガールもこの時代の建物であり、古代ローマでは、公衆浴場や水洗トイレ、地下水道も整備されていたそうです。ちなみに、世界で初めての水洗トイレは紀元前2200年頃のメソポタミア文明の頃からあったと言われています。約4200年前から水洗トイレはあったといわれます。快適な生活環境を維持していくうえで、水道設備はかかせません。綺麗な水を飲み、汚い水を安全に流す、という当たり前のことを怠ると大変なことになります。1850年頃のロンドンでは下水道が整備されておらず、生活排水を窓から捨てていたといわれます。そんな状況では、衛生状態がとても悪く、コレラ等の病気が蔓延していたといわれています。日本においても、工業廃水の垂れ流しを原因とした、水俣病やイタイイタイ病は遠い過去ではありません。水道設備がいかに大切かを考えさせられます。
この写真は以前紹介した人孔(マンホール)を製図したものです。人孔(マンホール)と人孔(マンホール)の間には水道管が通っています。今回は水道管の傾斜を0.34‰で書いています。この傾きはローマ水道と同じ傾きにしています。ぱっと見ただけでは傾いているのかどうかわかりません。いかに当時の建設技術が高かったのか窺えます。私たちは普段の業務では、地下の埋設物や地質、地形等の様々な諸条件を鑑み、地域の特性にあわせて設計に取り組んでいます。
日本の水道管の総延長は約65万kmあると言われています。これは地球16周分以上もある計算になります。イメージするのも難しいぐらい長い距離ですが、地面の下にはたくさんの水道管が通っています。日本の水道普及率は約97.9%とほとんどの家庭で水を使用することができると思いますが、こういった、膨大な水道インフラが私達の生活を支えています。
安全な水が飲めるという当たり前が、いかに大切であり、たくさんの人の力で成り立っているのかを少しでも考えていただく機会になれば幸いです。世界で水道の水が飲めるのは15か国だけともいわれています。私たちは、そんな高い品質の水道技術を普及させるために、日々がんばっています。
【原稿作成:水工環境部、編集:広報委員会】
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